「初回面接を考える」勉強会について
12月4日20時からオンラインで「初回面接を考える」という勉強会を開くことになりました。同業の友人が「初回面接について考えたい」と発言したことがきっかけになっています。
今はZOOMなどオンラインの「場」があるので、企画すること自体は楽になったなと改めて思います。部屋を借りる必要もないですし、参加者の方の交通の便などを考慮する必要もないですからね。企画案さえあればすぐに「やりましょう」と動くことが可能になりました。これはこれで良いのかなと思います。ただ、個人的には対面で勉強会をしたい、という思いが拭えませんが…。
さて、「いまさら初回面接について考えるの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、「初回面接」は心理臨床業務において最も重要な仕事の1つだといえます。
初回面接でクライエントに『必ず聞くべき項目』のようなものはもちろん臨床を始めた当初から様々なところでレクチャーを受けます。しかし、こうした項目はさほど重要ではないように思います。というのも、働く場所によって必ず聞かなきゃいけないものや重要度の高い質問は変わってくるのが当然だからです(もちろん共通するものもありますが)。働く場所ごとに、その都度変えていくしかありません。
私自身、臨床現場に出てから7~8年くらいはずっと初回面接+アセスメント面接(1~4回)が臨床を行う上での重要なテーマでした。もちろん今も大切なテーマですが、ただ数年前に比べると初回面接に対する気持ちのあり様は変化しているようにも感じます。
初回面接でまず行うことは当然「主訴」の確認になるわけですが、その主訴が生まれた(またはオフィス来所に至る)「文脈」や「ストーリー」を理解できるかが重要なポイントになります。それはもちろんその時点での理解なので、後に修正されることもあるわけですが。
以前は、力動的・精神分析的視点に基づいてこの文脈・ストーリーを理解することを特に重視していたように思います。
しかし、今もっとも私が大切にしていることは、その「文脈」や「ストーリー」を構築していく作業をクライアントと共に行うことができるか、協働作業できるかという視点です。『主訴の背景にある文脈・ストーリーを協働作業で作れるか』ということはその文脈・ストーリー自体が正確かどうかや、クライアントに了解していただけるか以上に大切なことだと今は感じます。
なぜならその協働作業自体が心理療法や心理カウンセリングそのものだともいえるからです。こうした心理療法・心理カウンセリングのプロセス・体験を、初回面接(+アセスメント面接)を通してクライアントに伝達することが、私にとっての初回面接の目的だといってもいいかもしれません。
つまり、クライアントはそこで提供されるものが体験的に協働作業的なものであることを知ることになりますし、そうするとそれが自分自身の求めていたものかどうかについて考えることが出来ます。もちろん私たち心理士側も目の前のクライアントが共に協働作業をやっていける方か、それとも一方向的な指示や助言を求めている方か初回面接を通して知ることが出来ます。
こうした初回面接に対する私の考えは、心理療法や初回面接の理論的な本には載っていることです。私自身も知的には知っていることでした。しかし、体験的に理解出来たのはここ数年のことなのだと思います。
クライアントに「心理療法・心理カウンセリングは協働作業なのです」と伝えればいいのではないかという考えもあるでしょう。確かに実際伝えることもありますが、知識として知ることと、体験的に知ることは大きく異なります。
クライアントと心理士が協働作業による理解を紡いでいくことが、心理療法や心理カウンセリングの特異な面だといえるのではないでしょうか。それは受動的に何かを学ぶこととは異なる体験です。
初回面接だけで本当に何時間でも議論できそうな感じがしてきますね。改めて勉強会が楽しみになってきました。12月4日の勉強会ではどのような議論になるか楽しみです。
勉強会では馮えりか先生(神楽坂カウンセリングルーム/芝浦工業大学)、中田香奈子先生(よりどころメンタルクリニック)に初回面接についての話題提供をしていただくことになっています。お二人とも10年以上の臨床歴を持つ臨床心理士の先生になります。
講師がいるわけではないので参加費などは取らずに、知人や研究会で知り合った方などを中心に20名程度の参加者が集まればいいかなと思っています。おそらく力動的アプローチ、精神分析的アプローチを志向する方が参加者の大部分を占めるかと思いますが、その他のアプローチの方もお呼び出来たらいいなと考えています。
「初回面接を考える」勉強会
12月4日(土) ZOOM開催 20:00~22:30