「初回面接を考える」勉強会を振り返って

 いつの間にか「初回面接を考える」勉強会を終えて5か月が経過してしまいました。オフィスの移転などもあり、バタバタとしていて更新が遅くなってしまいました。今更ではありますが、せっかく書いていたので2021年12月4日に開催した「初回面接を考える」勉強会について記しておきたいと思います。



 2021年12月4日にZOOM勉強会「初回面接を考える」を開催しました。13名の方に参加していただきました。
 馮先生からは、ご自身の臨床経験を振り返った上で、精神分析的心理療法に取り組むにあたっての初回面接とアセスメント面接についてお話がありました。特にどういった患者様に対して(精神分析的アプローチ用の)アセスメント面接を提供するかという問題ですね。精神分析的心理療法というものは、いくつかある心理支援の中の一つにすぎません。患者様のニーズや動機付けを見立てながらアセスメントを提供することの難しさについて語っていただきました。

 中田先生もご自身の臨床経験を振り返った上でのお話をしていただきました。特に初回面接+アセスメント面接における「型」の問題ですね。臨床の場に立ち始めた頃、どのような指導者の下で自らの心理療法のトレーニングを開始するかによってこの「型」に対するスタンスは大きく変わると思います。「型」にそこまでこだわらない先生や、始めは「型」に忠実に行うよう指導される先生など様々です。

 このようなお話をもとに参加者の皆様とディスカッションを行いました。その中で話題になったのはやはりどのような「職場」で臨床を行っているのか、という違いです。学生相談、総合病院、精神科クリニック、デイケア、当オフィスのような開業場面などなど…。それぞれの場所では心理士を雇う側やオーダーを出す側の思惑も異なりますし、いらっしゃる患者・クライアント様にも違いが生じます。
 出来るだけ1回の面接で何か意味あることをやってくれという職場もあれば、長期的な治療を念頭に置いている場もあり、また学生相談などでは当然学校適応が大きな問題になります。また、患者さんにとって自分(心理士)が始めに出会う人なのか、違うのかということも重要です。


 私たち心理士はこのような「場」における力動(心の動き)を見ていかねばなりません。

 例えば精神科クリニックで出会う場合などは、患者様は始めにクリニックの外観を見て、受付の事務員に会い、初診時に病院スタッフ(PSWや看護師など)に会い、主治医に会い、その後カウンセリングがオーダーされて私たち心理士が出会うことが多いと思います。その頃には患者様にはクリニックに対する様々な思いが形成されているでしょう(例えば居心地のいいクリニックだな、なんとなく殺伐としているな…、バタバタしているな…など)。
 また、心理士の方にも事前にインテーク情報、診察の情報、受付での対応情報など様々な情報が入ってきます(これらをあえて見ないで会う、という心理士もいるかもしれません)。

 上記のような出会い方は、何通かのメールのやりとりのみでいきなり1対1で出会う、当オフィスのような開業臨床とは大きく異なります。開業臨床では基本的にサイトには心理士のプロフィールが載っていますし、中には心理士自身の親子関係や子育て体験、心の悩みなどを書いている方もいらっしゃいます。医療機関で出会う心理士よりも患者様が事前に多くの情報を知ることができます。これが良いと感じる方もいれば、当然個人的な雰囲気が感じられ過ぎて拒否感が強まる方もいらっしゃるでしょう。

 当然ながらそれぞれメリット・デメリットが存在します。前者は「医療サービス」という枠組みの中で患者様を抱えるため、複数の人間が関わります。複数の人間の気持ちの動きが治療に影響しやすいともいえますが、その分抱える力は大きく、いろいろな事態に対応することが可能です。お会いできる患者さんの状態も様々だといえます。
 一方で当オフィスのような開業臨床は基本的には1対1の関係です(医療と併用される場合はその限りではありませんが)。関係性としては濃厚になりやすいところがあります。だからこそ対人関係や個人的問題に取り組みやすいとも考えられます。
 しかし、患者様を抱える機能としては医療サービスには遠く及ばないため(関わる人数や入院施設の有無など)に、医療機関よりは出会える患者様の幅に制限があると言わざるを得ません。


 初回面接から少し離れてしまいました。しかし、こうした臨床の「場」をどう理解するかが、その現場で患者さんと初めて出会うときの心理士のスタンスや振る舞い、やり方に大きく影響を与えます。
 初回面接が最も重要かつ難しいと考える臨床家の方も多くいらっしゃるのです。私自身もそう思います。初回が最も専門家として重要な場面でしょう。



 さて、兎にも角にもオンラインの恩恵を受け、様々な地域、現場の人と接触し(画面上ですが)、勉強会を開催することができました。
 参加された皆様ありがとうございました(5か月も経ってしまいましたが)。

 臨床を始めて4年目くらいの方から15年目くらいの方までが集まっていただきました。初めてお会いする方もけっこういらっしゃったのですが、活発な議論が出来て私もとても勉強になりました。また開催されるならばぜひ参加したいというお声もいただいたので、いずれ別テーマで企画できればいいなぁと考えております。


2022年05月20日